〜経営と現場をつなぐ“見える化”の習慣〜
「現場が忙しく、数値は本部任せになっている」
「会議資料は見ているが、何を見ればよいか分からない」
──そんな施設長の声をよく耳にします。
しかし、介護施設の運営において、“経営に関心を持つ施設長”かどうかは、組織の風土や成果に大きな違いを生みます。
すべてを把握する必要はありません。
まずは、月に一度でも「自分の目で数字を確認する」習慣を持つことが、経営と現場のギャップを埋め、職員の意識改革にもつながります。
本コラムでは、介護施設長が月1回必ずチェックすべき5つの数値をご紹介します。
稼働率は、言わば施設の“体温計”です。
利用者がどの程度部屋や定員に対して埋まっているかを示す指標であり、経営の安定性や営業活動の効果を測る最も基本的な数値です。
1月の稼働率=月間延べ利用者数 ÷ 定員×月日数
稼働率の低下は、他のすべての数値の悪化にもつながりやすいため、月ごとの推移と変動理由の把握が不可欠です。
人手不足の中、職員の稼働状況を数値で見る習慣は非常に重要です。
特定の職員に業務が集中していないか、慢性的な疲弊や不満のサインを早期に見つける手がかりになります。
欠勤日数(体調・家庭理由など)
有休取得率(偏りの有無、取得しやすい風土か)
月次でこの数値を確認することで、業務の属人化や組織のひずみに早期に気づくことができます。
請求額の推移は、収益面だけでなく“制度の活用状況”を示す鏡です。
とくに加算項目の算定状況は、「ケアの質の向上」と「職員育成」の両面と直結しています。
基本報酬の月額・前年比
算定加算の件数・未取得理由
処遇改善加算の対象職員数・配分計画の進捗
**「取りこぼしていないか」「今月の変化は何か」**を毎月チェックし、必要に応じてリーダーと対話を行うと、制度活用への意識が現場にも浸透します。
これらの記録は、“声なきリスク”の見える化です。
一見マイナスに見える数字も、「報告されている」という事実自体が組織の健全性を示す場合があります。
苦情・相談:内容分類・対応状況
ヒヤリハット:頻度・傾向・対策有無
報告がゼロだから安心、とは限りません。
“出てこない理由”にも目を向けるのが施設長の役割です。
財務担当者に任せがちな部分ですが、施設長としても全体像を把握しておくべきです。
収入:報酬請求額、補助金、その他収入
支出:人件費、食材費、委託費、水道光熱費など
月間の黒字・赤字(予算比との乖離)
ここでの目的は、**経営責任を問うことではなく「異常値を早期にキャッチする習慣」**です。
月に一度でも、数字を確認し、自分の言葉で「なぜ?」を問いかけることで、施設長のリーダーシップは確実に変わります。
数字は経営のためだけでなく、現場との信頼関係を育てるツールです。
当社では、Excelやツールを活用した「施設長のための月次ダッシュボード設計支援」も行っております。
現場に合った“見える化”を始めたい方は、ぜひご相談ください。