「形だけの評価になっている」
「評価が給与にどう反映されているのか見えない」
「頑張っても報われないと感じる」──
医療・介護の現場で評価制度について話を聞くと、多くの病院・施設でこうした声が上がります。
せっかく導入した制度が職員の不信感や不満の温床になってしまっているケースも少なくありません。
本来、評価制度とは「処遇を決めるためのもの」だけではなく、職員を“育てる”ためのツールであるべきです。
本コラムでは、医療・介護現場にフィットした評価制度の考え方と再構築のポイントを紹介します。
多くの医療・介護事業所では、評価制度の導入が進んでいる一方で、
その背景にあるのが、年功序列型の給与テーブルとの“制度のねじれ”です。
医療・介護業界では、長く勤務することで基本給や手当が上がっていく設計が根強く残っており、いくら高く評価されても処遇に反映されないケースが珍しくありません。
さらに、一般企業を参考に導入された「目標管理制度(MBO)」や「コンピテンシー評価」などの汎用型の評価スキームも、医療・介護の現場にうまく馴染みません。
その主な要因は以下の通りです:
結果として、評価制度が「やったふり」「形だけのルール」になり、むしろ現場の不信感や停滞感を生む要因となっているケースすら見受けられます。
評価制度を再構築する際に最も重要なのは、評価を「処遇の根拠」ではなく「成長を支える仕組み」として捉えることです。
医療・介護の職場においては、以下の3つの視点を押さえることで、評価制度を現場に根付かせることができます。
看護師・介護士・リハビリ職・事務職など、医療介護の現場には多様な職種が存在し、それぞれ異なる専門性を持っています。
ひとつの評価基準ですべての職種を横並びで評価しようとすると、「何を求められているのか分からない」「自分の仕事は見てもらえていない」といった不満が生まれやすくなります。
そのため、職種ごとの専門性に応じた評価軸を設けることが重要です。
たとえば看護師であれば「急変対応」や「チームへの助言力」、介護士であれば「利用者対応力」や「介護記録の質」など、実際の業務に即したスキル指標に落とし込むことがポイントです。
評価に主観が入りすぎてしまうと、納得感が得られず、評価結果への不信感につながります。
そのため、個人目標や業務目標はできる限り「数値」や「具体的な行動」で表現することが望ましいです。
たとえば、
といったように、「やった・やっていない」が明確になる目標設定にすることで、評価が客観的かつ振り返りやすくなります。
数値化が難しい場合も、行動の頻度や具体的な例示で補う工夫が効果的です。
面談は評価結果を伝えるための一方的な時間ではなく、職員と上司が「これまで」と「これから」を共有する対話の時間であるべきです。
評価者は、成果だけでなく日々の取り組みや工夫、小さな前進にも目を向け、「見てくれている」「理解されている」と実感できるフィードバックを意識する必要があります。
また、面談では今後の目標や希望するキャリア、苦手意識のある業務などについても掘り下げ、次の成長につながる気づきや応援の言葉を届けることが、評価制度を“育てる道具”に変える鍵となります。
医療や介護の現場では、「みんなで支え合う」文化が強いため、評価=差をつけることに抵抗を持つ職員も多くいます。
そのため、評価制度を導入する際には、公平性以上に“納得感”を大切にする設計が求められます。
これらを丁寧に説明し、評価される側の理解と合意形成を積み上げることで、制度は徐々に現場に根づいていきます。
医療・介護の現場では、単純な数字や成果で人の価値を決めることが難しいケースが多いです。
だからこそ、「どう成長し、どのように貢献しているか」を職員自身と共に見つめ直す評価制度が必要です。
評価制度は、給与や等級を決める「査定の道具」ではなく、**職員と組織が一緒に育っていくための“対話のフレーム”**であるべきです。
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