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Excelで始める管理会計:レセプトと経費をどう紐づけるか

なぜ今、管理会計が必要なのか

医療・介護現場では、診療報酬や介護報酬が改定のたびに変動し、経営環境は年々不透明になっています。
こうした中で、単に「月次の損益」を確認するだけでは、部門やサービス単位の採算性を正しく把握できません。
必要なのは管理会計による“見える化”。その第一歩として、多くの施設で活用しやすいのが Excelを使った管理会計の仕組み作り です。

レセプトと経費を紐づける意味

レセプトデータ(収益)と経費を紐づけることで、次のような分析が可能になります。

  • 診療科・病棟・サービス種別ごとの採算性

  • 特定の医師・チーム・ユニット単位での利益構造

  • 診療報酬改定の影響シミュレーション

  • 高コスト構造の特定と改善策立案

特に医療や介護では、収益の大半がレセプトに基づくため、ここを起点に経費と結びつけることが、部門別管理の要になります。

紐づけの基本ステップ(Excel活用例)

ステップ①:レセプトデータの整理

  • レセコンや請求ソフトからCSV形式でレセプト集計を出力

  • 施設区分・診療科・サービス種別など、部門別のキー項目を追加

  • 年月を標準化した日付形式に統一

ステップ②:経費データの分類

  • 会計ソフトから科目別経費を出力

  • 固定費(人件費・減価償却費など)と変動費(医薬品費・委託費など)に分ける

  • 各経費を、対応する部門やサービス単位に割り当てるルールを設定

ステップ③:マスター表でキーを一致させる

  • 「部門コード」「サービス区分コード」など共通のキーを作成

  • VLOOKUPやINDEX/MATCH関数で、収益データに経費を紐づけ

ステップ④:損益計算の自動化

  • 部門別に「収益-経費=部門利益」を算出

  • ピボットテーブルで月別・部門別の損益を可視化

  • グラフ化して経営会議で共有

運用のポイント

  • データ更新のルーティン化:月初◯日までに前月分を集計

  • 部門コード・科目コードの統一:レセプトと経費の突合を容易にする

  • 暫定値から始める:完璧を目指すより、まずは主要経費から紐づけを開始

  • 分析結果をアクションにつなげる:数字を見せるだけでなく、改善提案とセットで共有

導入効果

Excelベースの管理会計でも、部門別の収支が「見える」ようになることで、

  • 赤字部門の構造的要因が特定できる

  • 高利益部門の成功要因を横展開できる

  • 診療報酬改定や設備投資の影響をシミュレーションできる
    など、経営判断の精度が格段に向上します。

2025.9.16