トピックス

属人化を脱却する「業務設計」の本質

医事課・地域連携室の属人化をなくす“業務設計”5ステップ

「あの人がいないと回らない」状態が、組織を弱くする

医事課や地域連携室の業務改善を進める中で、必ずと言っていいほど聞こえてくるのが、
「その業務は○○さんしか分からない」
「引き継ぎしようにも、言語化されていない」
という声です。

医療現場では経験や勘が重要視されやすく、結果として**業務が人に紐づく“属人化”**が起きがちです。
一見するとベテラン職員の頑張りで現場は回っているように見えますが、この状態は決して健全ではありません。

休職・退職・異動が起きた瞬間に業務が止まる。
改善やDXを進めたくても、現状整理すらできない。

属人化は「個人の問題」ではなく、業務設計の問題です。

※属人化がなぜ起き、なぜ改善が止まってしまうのかについては、
▶ “属人化”を脱して仕組み化へ
でも詳しく整理しています。

属人化をなくす鍵は「マニュアル」ではなく「業務設計」

属人化対策というと、「マニュアルを作ろう」と考えがちですが、
マニュアル作成だけでは多くの場合、形骸化します。

なぜなら、

  • 業務の目的や判断基準が整理されていない

  • 例外対応や分岐条件が人の頭の中にある

  • 業務量や負荷の偏りが見えていない

こうした状態のまま文章化しても、「読まれない資料」が増えるだけだからです。

重要なのは、業務を構造として再設計すること
以下に、医事課・地域連携室で実践しやすい「業務設計5ステップ」を整理します。

ステップ1:業務を「人」ではなく「機能」で分解する

まず行うべきは、
「誰がやっているか」ではなく
「何の機能として存在しているか」
で業務を洗い出すことです。

例:

  • レセプト点検

  • 返戻・査定対応

  • 紹介状管理

  • 連携先との連絡調整

これを人ベースで整理すると属人化が温存されます。
機能単位で棚卸しすることが第一歩です。

ステップ2:判断が必要なポイントを洗い出す

属人化が生まれる最大の要因は、「判断」が個人に委ねられている点です。

  • どこまで確認すればOKなのか

  • どのケースで上長判断が必要なのか

  • 例外対応はどこまで許容されるのか

これらを洗い出し、
「判断基準」と「裁量の範囲」を明確にします。

すべてをルール化する必要はありません。
判断の“境界線”を共有することが目的です。

ステップ3:業務量と頻度を可視化する

次に重要なのが、業務負荷の見える化です。

  • 毎日発生する業務か

  • 月末・月初に集中する業務か

  • 突発対応が多い業務か

これを整理すると、
「なぜ特定の人に負荷が集中しているのか」
「分担や平準化は可能か」
が見えてきます。

属人化は、忙しさの偏りからも生まれます。

業務量を可視化すると、
判断や調整が特定の人に集中している実態も見えてきます。

業務設計では、
こうした「共有や判断の流れ」をどう整えるかも重要な論点です。
▶関連コラム: 会議が変われば組織が変わる

ステップ4:標準と例外を分けて設計する

業務のすべてを完璧に標準化する必要はありません。
重要なのは、

  • 8割の「標準業務」

  • 2割の「例外対応」

を分けて考えることです。

標準業務は手順化・仕組み化し、
例外対応は「どう判断するか」を共有する。

この整理ができると、
新人や異動者でも業務に参加できる余地が生まれます。

ステップ5:仕組みで回る形に落とし込む

最後に、業務設計を「仕組み」に落とします。

  • Excelや共有ファイルでの一覧化

  • 簡易的なチェックリスト

  • 定例ミーティングでの状況共有

最初から大掛かりなシステム導入は不要です。
現場で使われる形で回り始めることが何より重要です。

属人化をなくすことは、現場を楽にすること

属人化の解消は、管理のためでも効率化のためだけでもありません。

  • 休みやすくなる

  • 引き継ぎが楽になる

  • 改善やDXの土台ができる

結果として、現場の心理的負担を下げる効果があります。

業務設計は「現場を縛るため」ではなく「支えるため」に

属人化をなくす業務設計とは、
現場を管理するためのものではありません。

人が入れ替わっても回る
改善が止まらない
次の一手を考えられる

そんな組織をつくるための基盤づくりです。

医事課・地域連携室の業務改善や標準化を検討されている場合、
まずは「今の業務が、どこで人に依存しているのか」を整理するところから始めてみてください。

▶ 無料相談はこちら

2025.12.22