多くの介護施設で聞かれる声があります。
毎日忙しく働いているのに、生産性が上がっている実感がない
人員配置や残業が適切なのか、判断材料がない
加算は取っているが、経営にどれだけ寄与しているか分からない
この背景にあるのが、KPI(重要業績評価指標)が曖昧、あるいは機能していないという問題です。
介護現場ではExcelで数値管理をしている施設も多いですが、
「入力はしているが、意思決定に使われていない」
「数字を見ても、次の打ち手が分からない」
という状態に陥りがちです。
これは、現場が怠けているのではなく、経営の見方が“勘と経験”に依存してきた構造の問題とも言えます。
この点については、
▶ “勘と経験”からの脱却──医療・介護経営に管理会計を根づかせるには
で、なぜ数字が経営に活かされないのかを詳しく整理しています。
介護施設のKPIが機能しなくなる理由は、主に次の3点です。
稼働率・利用者数・加算取得状況などを追っていても、
それが
誰の行動の結果なのか
どこを改善すれば動くのか
が分からないと、KPIは「報告用の数字」で終わってしまいます。
介護経営において、生産性の核心は人件費と稼働のバランスです。
しかし、
利用率は見ているが、職員配置との関係は見ていない
残業時間は把握しているが、業務量との因果が分からない
こうした状態では、「忙しい/余裕がある」の判断が感覚頼りになります。
Excel自体が悪いわけではありません。
問題は、
月1回更新して終わり
グラフを作って満足
他部署・管理者と共有されない
という使われ方にあります。
「KPIが大事なのは分かるが、具体的に何を見ればいいのか分からない」
という声もあがります。
介護施設にて、まず月次で押さえるべき指標については、
▶ 介護施設長が月1回見るべき5つの数値
で、現場視点から整理しています。
介護施設で本当に使えるKPIは、「数を並べること」ではなく、
経営判断につながる構造で設計する必要があります。
ポイントは次の3つです。
例として、
アウトカムKPI
稼働率
利用者1人あたり収益
人件費率
プロセスKPI
職員1人あたり対応人数
直接介護時間/間接業務時間
欠勤・残業発生率
アウトカムだけを見ても改善はできません。
プロセスKPIとセットで見ることが、生産性改善の第一歩です。
施設全体の数字だけでは、現場は動きません。
施設長が見るKPI
管理者が見るKPI
現場リーダーが見るKPI
それぞれに「見るべき数値」を分けることで、
KPIは初めて行動の指針になります。
介護の生産性向上は、
利用率・稼働率を上げる
だけではありません。
同時に、
無駄な業務時間
属人化による手戻り
判断待ちによる停滞
を減らすKPIも設計する必要があります。
ここで重要になるのが、KPIを扱う基盤です。
Excelでの管理が限界を迎えるのは、次の瞬間です。
数値が増えて管理が煩雑になった
複数人で更新すると整合が取れない
過去比較・傾向分析ができない
この段階で、
Power BI や Power Platform などを活用した
KPIダッシュボード化を検討する価値が出てきます。
ポイントは、
自動集計
月次・日次での可視化
人件費・稼働・業務量を同じ画面で見る
ことです。
DXとは、大規模システム導入ではなく、
「判断の質を上げる仕組み」をつくることにあります。
KPIという言葉に、
「管理が厳しくなる」
「数字で責められる」
というイメージを持つ方も少なくありません。
しかし、本来のKPIは逆です。
無理な配置に気づける
忙しさの偏りを是正できる
改善の根拠を持って話せる
KPIは、現場を守り、持続可能にするための道具です。
介護の生産性向上は、
精神論や頑張りでは実現できません。
数字で状況を把握し
構造で課題を捉え
仕組みで改善を回す
このサイクルを回せる施設が、
人材確保・加算取得・経営安定を同時に実現しています。
もし、
「Excelで管理しているが、正直使いこなせていない」
「KPIをどう設計すればいいか分からない」
と感じている場合、
まずは今ある数字をどう整理すべきかを見直すところから始めてみてください。