――なぜ「頑張っているのに回らない連携」から抜け出せないのか
地域連携室やMSWの方から、こんな声をよく聞きます。
特定の職員がいないと、連携が止まってしまう
引き継ぎをしても、関係性がうまく続かない
忙しく動いているのに、成果が安定しない
これらは、個人の力量不足や努力不足が原因ではありません。
多くの場合、地域連携の進め方そのものが「属人化を前提とした構造」になっていることが問題です。
過去のコラムでは、
「待ちの連携」の限界や、「攻めの連携」へ転換する必要性を整理してきました。
今回は一歩踏み込み、
**地域連携が属人化してしまう組織に共通する“3つの構造”**を整理します。
最も多いのがこの状態です。
〇〇先生との関係は、△△さんしか分からない
この施設の事情は、ベテランMSWの頭の中にある
「誰と、どんな話をしたか」が記録に残っていない
この構造では、担当者が変わった瞬間に連携が不安定になります。
関係性そのものが失われるわけではなくても、
“活かし方”が分からなくなるのです。
結果として、
新任者が一から関係づくりをやり直す
引き継ぎ期間が長期化する
現場の心理的負担が増える
という悪循環が生まれます。
属人化がなぜ起き、なぜ改善が止まってしまうのかについては、
▶ 属人化を脱却する「業務設計」の本質
で詳しく解説しています。
地域連携の現場では、日々多くの判断が求められます。
どこに、どのタイミングで訪問するか
このケースは、どこまで踏み込むか
今、優先すべき連携先はどこか
これらの判断がすべて「個人の経験値」に依存していると、
組織としての再現性は生まれません。
よくあるのが、
ベテランは成果を出せるが、若手は動きづらい
判断の理由が言語化されていない
会議が「経験談の共有」で終わってしまう
という状態です。
これは、個人の能力の問題ではなく、
判断構造が設計されていないことが原因です。
もう一つの共通点は、
「どの行動が、どの成果につながったのか」が見えていないことです。
訪問件数は把握しているが、紹介との関係が分からない
忙しさは共有されるが、成果は感覚的
「よく動いている/動いていない」という評価になりがち
この状態では、
改善点が特定できない
次の一手が決められない
モチベーションが属人的になる
という問題が起こります。
結果として、
連携活動が“頑張り合い”になり、戦略にならないのです。
ここまで見てきた3つの構造は、すべて共通しています。
人に頼らざるを得ない
経験に頼らざるを得ない
感覚で判断せざるを得ない
つまり、
属人化は避けられない状態に置かれているということです。
だからこそ必要なのは、
「誰がやるか」を変えることではなく、
「どう回るか」を再設計することです。
属人化を防ぐ地域連携には、次の視点が欠かせません。
関係性や履歴を「引き継げる情報」として残す
判断の軸を言語化し、共有できる形にする
行動と成果を結びつけて振り返る
これは、単なるツール導入の話ではありません。
地域連携そのものを、業務として設計し直すという考え方です。
属人化を解消するためには、
「誰が頑張るか」ではなく、
「どうすれば組織として再現できるか」を設計する必要があります。
その具体像については、
▶ 地域連携DX──待ちから攻めへ
でも、データと仕組みを使った連携の再設計として整理しています。
地域連携は、
これからの医療機関にとって、経営と現場をつなぐ重要な領域です。
病床稼働を安定させたい
現場の負担を減らしたい
持続可能な連携体制をつくりたい
そう考えるなら、
属人化を前提とした連携から、一段先へ進む必要があります。
「誰がやっても一定の質で回る」
そんな地域連携の形を、
一度立ち止まって見直してみてはいかがでしょうか。