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部門別採算制度がうまくいかない理由

──多くの病院が“数字を作るだけ”で終わってしまう

病院経営の改善策として、「部門別採算制度」を導入する医療機関は増えています。
診療科や病棟、部門ごとの収益とコストを整理することで、どこで利益が生まれているのか、どこに改善の余地があるのかを把握できるからです。

しかし実際には、「部門別採算を導入したが経営改善につながらない」という声も少なくありません。
帳票は作られているものの、会議でほとんど活用されず、気づけば毎月数字を作るだけの作業になってしまう。
こうした状況は、多くの病院で見られる典型的なパターンです。

部門別採算制度が機能しない理由は、ツールや計算方法ではありません。「数字の使い方」にあります。

Excelで集計するだけで終わってしまう

最も多い失敗は、Excelで部門別採算表を作ること自体が目的になってしまうケースです。

毎月、経理や事務部門が収益や人件費を集計し、部門ごとの損益を計算する。
しかし、その数字は一部の担当者しか理解しておらず、経営会議で十分に議論されることもない。
結果として、数字は「報告資料」として作られるだけになってしまいます。

Excel自体が問題なのではありません。
むしろ多くの病院では、Excelから始める管理会計は現実的な方法です。
問題は、その数字が経営判断や現場改善に結びついていないことです。

数字が“作られる”だけで、“使われない”。この状態では、部門別採算制度は形だけの仕組みになってしまいます。

また、部門別採算を「収益の比較」だけで終わらせず、生産性という視点から読み解くことが重要です。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。
▶ 収益ではなく生産性を見よ──部門別採算管理のすすめ

現場と数字が共有されていない

もう一つの大きな問題は、部門別採算が経営層だけの資料になってしまうことです。

部門別採算の本来の目的は、「どの部門がどれだけ価値を生み出しているか」を組織全体で理解することです。
しかし実際には、数字が経営会議の中だけで扱われ、現場の管理者やスタッフにはほとんど共有されていないケースが多いです。

その結果、現場では次のような状況が起きます。

・自分の部門の採算状況を知らない
・どの指標を改善すればよいか分からない
・経営の意図が現場に伝わらない

これでは、部門別採算は単なる会計資料に過ぎません。
数字が現場と共有されて初めて、「なぜこの結果になったのか」「どう改善できるのか」という対話が生まれます。

KPIが設計されていない

部門別採算制度がうまくいかない病院では、「結果の数字」しか見ていないことも多くあります。

例えば、部門の利益や赤字だけを見て、「なぜこうなったのか」が分からないまま議論が終わってしまうケースです。
これでは改善の方向性を見つけることができません。

重要なのは、採算の結果だけでなく、その背景にあるKPIを設定することです。例えば次のような指標です。

・病床稼働率
・患者1人あたり単価
・職員1人あたり付加価値
・検査や処置の件数

こうした指標を組み合わせて見ることで、初めて採算の構造が理解できます。
部門別採算は、単なる損益計算ではなく、「改善のヒントを見つけるための仕組み」です。

部門別採算は「仕組み」と「文化」で決まる

部門別採算制度は、数字を作ることが目的ではありません。数字を使って組織の行動を変えることが目的です。

そのためには、次の三つが欠かせません。

・部門別の収益とコストを見える化する仕組み
・管理職や現場と数字を共有する運用
・改善行動につながるKPI設計

この三つがそろって初めて、部門別採算は経営改善のツールとして機能します。

医療・介護経営では、制度改定や人材不足など外部環境の変化が続いています。
こうした状況の中で、感覚や経験だけで経営判断を行うことはますます難しくなっています。
だからこそ、数字を使った経営の仕組みを整えることが重要になります。

部門別採算制度は、その第一歩となる管理会計の仕組みです。
数字を「作る」だけで終わらせるのではなく、「現場を動かす言語」として活用することが、これからの病院経営には求められています。

レセプト収益と経費を整理し、Excelで部門別の収支を可視化するだけでも、経営の見え方は大きく変わります。
関連コラム▶ Excelで始める管理会計:レセプトと経費をどう紐づけるか


当社では、医療・介護機関向けに、部門別採算の設計支援や管理会計の導入支援を行っています。
単に数字を作るだけでなく、現場と共有し、改善行動につながる仕組みづくりまで伴走することを重視しています。

「部門別採算を作っているが、うまく活用できていない」
「数字はあるが、経営改善につながっていない」

そのようなお悩みがある場合は、まず現状の整理からでも構いません。

部門別採算を“作る仕組み”から、経営を動かす仕組みへ。
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2026.3.16