──医療・介護経営に管理会計を根づかせるには
医療・介護業界では、長年にわたり「経営判断=院長や管理職の勘と経験」に頼る場面が多く見られます。
たとえば、「今月は患者が多かったから業績もいいはず」「この加算を取れば利益は上がるはず」といった感覚的な判断です。もちろん、現場をよく知るトップの直感は重要な意思決定材料ですが、それだけでは環境変化に対応しきれません。
診療報酬・介護報酬改定や地域ニーズの変化、人材コストの上昇など、外部環境は年々複雑化しています。こうした状況では、**数字に基づいた現状把握と将来予測の仕組み(=管理会計)**がなければ、戦略的な経営判断は困難です。
管理会計の重要性は理解されていても、実際に現場で定着している医療機関・介護事業所は多くありません。その背景には、次のような「3つの壁」があります。
仕組みが複雑すぎる
市販の会計ソフトやERPを導入しても、医療・介護特有の収益構造(診療報酬・加算・施設基準など)に合わず、現場で使いこなせないケースが多いです。
データが分散している
レセプト、勤怠、会計処理、加算実績など、経営判断に必要な情報が複数のシステム・Excelに分かれていて、統合的に分析できないという課題があります。
“経理部門任せ”になっている
管理会計が財務・経理部門だけの仕事と捉えられ、経営層や現場責任者が数字を活用する文化が根づいていないケースも多いです。
こうした壁を越えるには、いきなり本格的なシステム導入を目指すのではなく、身近なデータから小さく始めることが有効です。
たとえば、
月次ベースの部門別損益をExcelで作成する
人件費とレセプト収入の関係を部門ごとにグラフ化する
加算取得率や単価の推移をモニタリングする
といった形でも、経営の見える化は十分可能です。
重要なのは、「数字を見て、次の行動を話し合う」場をつくること。最初は粗い数値でも構いません。経営層と現場が共通の指標を持ち、改善に向けた会話を重ねることで、管理会計は徐々に“組織の言語”として根づいていきます。
医療・介護経営において、“勘と経験”は現場を支える大切な力です。しかし、それだけに頼る経営から一歩踏み出し、数字に基づいた管理会計の仕組みを根づかせることが、持続的な経営改善の第一歩になります。
当社では、医療・介護事業者向けに
Excelを活用したシンプルな管理会計導入支援
レセプト・人件費・加算などデータの統合とKPI設計
経営会議で活用できる月次ダッシュボード構築
を行っています。
大掛かりなシステム投資をしなくても、「数字を経営に活かす」ことは十分可能です。感覚と数字を組み合わせた、実践的な経営改善を一緒に始めてみませんか?