──制度の“隙間”と向き合う
超高齢社会の進展とともに、日本の医療・介護政策の柱となってきたのが**「地域包括ケアシステム」**です。
これは、住み慣れた地域で医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みを目指すもの。国は「病院完結型医療」から「地域完結型医療」への転換を促し、医療と介護の垣根を越えた協働を理想像として掲げています。
理念としては誰もが共感できるものであり、また必要性も疑いようがありません。しかし現場の視点で見ると、この“理想”と“現実”の間には少なからぬ“隙間”が存在しています。
地域包括ケアが現場で機能しにくい要因は、大きく3つに整理できます。
縦割り制度の壁
医療保険と介護保険は制度上の管轄が分かれており、給付範囲や報酬ルールも異なります。結果として「これは医療の仕事なのか介護の仕事なのか」が不明確なケースが生じ、現場では調整に多くの時間が割かれています。
地域ごとのリソース格差
都市部では多様なサービス資源が揃っている一方、地方や過疎地域では「訪問看護が1事業所しかない」「夜間対応できる施設がない」など、制度の理念を実現できるインフラが不足しています。理念は同じでも、地域によって到達度は大きく異なります。
多職種連携の難しさ
「顔の見える関係づくり」といった施策が進められてきましたが、実際には医師・看護師・介護職・行政職員の間で情報が分断され、連携が形式的にとどまることも少なくありません。
現場から見える「制度の隙間」にどう対応するか。いくつかの視点があります。
柔軟な役割分担
制度の枠にとらわれず、「誰が担えるか」を基準にした実務分担を現場で工夫する。たとえば介護スタッフが医療的な観察を補助し、看護師が生活支援の視点を持つなど、相互補完的な働き方が求められます。
データとKPIによる可視化
「患者の在宅復帰率」「看取り件数」「多職種カンファレンス実施数」などの指標を設け、地域包括ケアの成果を可視化する。これにより、政策理念と現場成果の間にあるギャップが浮き彫りになり、改善の方向性を議論しやすくなります。
地域特性に合わせたシステム設計
同じ制度を全国一律で運用するのではなく、地域資源の実情に応じて重点を置く領域を変える。都市部では「在宅療養支援」、地方では「移動支援や交通インフラ整備」といった具合に、地域ごとの現実に即した戦略が必要です。
地域包括ケアは、理想としては誰もが支持できる構想です。しかし「理想を語ること」と「現実に運用すること」の間には、大きな隔たりがあります。
現場の声を踏まえ、制度の隙間にどう手当てをしていくか。これこそが今後の医療・介護経営に問われる実践的なテーマです。
当社は、医療・介護現場に寄り添い、政策の理念を現場でどう実装するかを支援しています。制度改定の解釈から業務フロー設計、地域連携の仕組みづくりまで、机上の理論ではなく「実際に成果が出る仕組み化」を伴走するのが私たちの強みです。
「理想は分かるが、現実は違う」と悩んだときこそ、ぜひご相談ください。制度の隙間にこそ、改善と成長のチャンスが隠されています。