コラム

“経験年数=能力”ではない時代の処遇設計

コラム

年功的処遇の限界と現場の違和感

「経験年数が上の職員の給与が高いのは当然」
「長く勤めてくれた人に報いたい」
──こうした考え方は、これまでの医療・介護現場において自然なものでした。

しかし近年、年功的な処遇制度が現場のモチベーションを下げているという声が増えています。

たとえば、

  • 若手が新たな手法やICTを積極的に導入しても、処遇には反映されない

  • ベテランがルーチン業務に終始していても、高い給与水準が維持されている

  • 新人や中堅が「評価されても処遇が変わらない」と感じて、離職を考える

こうした状況は、職員のエンゲージメントや組織全体の成長力にブレーキをかけてしまいます。

多様な人材を活かすための“新しい設計思想”

今、必要なのは「年数」ではなく、**「成果」と「成長プロセス」に着目した処遇設計」**です。

具体的には、次のような視点が求められます。

  •  役割に応じた貢献の“見える化”

単なる業務量ではなく、「患者満足」「サービス改善」「新人育成」など役割ベースの成果項目を定義し、それをもとに評価・報酬を設計する。

  •  成果だけでなく“成長”を評価する

一人で難しいケースに挑戦した、チームで新しい取り組みを主導した──そうした過程への努力や挑戦も評価に組み込む。

  •  ランクではなく“個人目標”と連動させる

上位職になるほど抽象的になる評価ではなく、各職員の目標や強みに合わせた個別評価(ジョブグレード制など)を活用することで、納得度が高まりやすくなります。

処遇制度を組織開発の“土台”に

制度は“箱”でしかありません。
本当に重要なのは、それを現場でどのように運用するかという「対話とプロセス」です。

  • 「なぜこの制度にしたのか」

  • 「どうすれば評価されるのか」

  • 「自分の強みはどこにあるのか」

こうした対話の積み重ねが、制度を「納得の仕組み」へと育てていく鍵となります。

また、制度は一度つくって終わりではありません。
定期的に現場の声を吸い上げ、**柔軟に調整・進化させる“育てる制度”**として位置づけましょう。

処遇設計は「働く意味」と向き合うチャンス

“経験年数=能力”という前提が崩れた今、処遇制度は単なる給与配分の仕組みではなく、
**「どんな人材を育てたいか」「どんな組織でありたいか」**を明示するメッセージでもあります。

当社では、医療・介護分野に特化した「役割・成果・成長」をベースにした評価制度設計や、
現場に浸透するための面談支援、運用研修、スタッフ巻き込みワークショップ等を提供しています。

制度は、現場の可能性を引き出す“起点”になり得ます。
皆さんの未来に向けた、柔軟で前向きな制度設計をご一緒しませんか?

2025.7.28