どのような組織でも「いかにしてリーダーシップを発揮するか」は大変重要な問題です。
本コラムではリーダーシップの考え方をいくつか取り上げます。
リーダーシップとは一般的に「集団の目的(目標)達成において、その活動に影響を与える力」であると定義されます。
ここにはキーワードが3つあります。
1つ目は“目的”です。井戸端会議のような特に目的もない集まりの中では、リーダーシップ云々は問題になりません。リーダーシップは共通の目的を持つ集団の中で初めて議論されるものです。
2つ目は“達成”です。リーダーシップは集団の目的達成に向けて発揮されるものです。これを邪魔したり、これとは関係のないことに力を注いだりしても、それはリーダーシップとは言いません。
3つ目は“影響”です。リーダーシップは集団をチームに変える影響力だと言われます。この場合、チームとは集団の力がメンバー個々の力の総和を上回っている状態を指します。1+1を3にも5にもする力がリーダーシップであると言えます。
定義を踏まえた上で、いかにして良いリーダーシップを発揮するかを考えるときに把握すべき項目が4点あります。
(集団を引っ張るリーダーとリーダーに付いていくフォロワーがいることを前提とします)
これら考慮すべき要素から言えることは、リーダーシップに固定した理想像(=リーダーシップの正解)はないということです。4つの要素の実態は千差万別だからです。
リーダーシップに万人共通の答えはありません。自分にとっての最高のリーダーシップを追求するという着眼点が重要です。
リーダーシップに万人共通の答えはないといっても、これまでの研究や経験談から参考すべき内容は沢山あります。本コラムでは2つ紹介します。
1つ目はマネジメントとリーダーシップを対立させるという考え方です。
これは“組織にはマネジメントとは別にリーダーシップという機能がある”と強調することで組織活動の効果を高めようとする考え方です。
以下のような対立軸があります。
このようにマネジメントとリーダーシップを分けて解釈することで、組織の革新を促します。
これらリーダーシップの特徴にはリスクが大きいという共通点があります。“不確実な未来に向けて新しいことを実現する”といったリスクが大きい方向へフォロワーを引っ張る力がリーダーには求められます。
マネジメントとリーダーシップの役割や求められる能力の違いを理解することは、リーダー自身の思考を整理し組織の活動効果を高めるのに有効です。
2つ目は、ベクトルを合わせるという考え方です。
これはリーダーシップの定義で述べました「集団をチームに変える影響力」の基本的なアプローチです。
ベクトルを合わせるとは、集団・組織の目的が明確であるとき、リーダーとフォロワーがその目的達成と同じ方向に向かせることを指します。
いくら個々の能力が高くてもベクトルが揃っていなければ組織の力は弱くなります。
ベクトルを合わせた顕著な例がラグビーの日本代表チームです。2019年のラグビーW杯では“ONE TEAM”をスローガン掲げ、日本史上初めて予選グループを突破しベスト8進出を果たしました。この感動的な出来事の背景には、選手の約半数が外国人という多国籍チームの中、ベスト8入りという目標達成に向けベクトルを合わせチーム力を格段に高めたことが大きく影響しているはずです。日本代表を指揮したジョセフ氏のリーダーシップによって、1+1を5にも10にもした事例と言えます。
このようにバラバラな方向に向いている個の力を組織の目指すべき方向に合わせ、チームの力を高めることがリーダーシップの大切な考え方となります。