コラム

リーダーシップとは

どのような組織でも「いかにしてリーダーシップを発揮するか」は大変重要な問題です。
本コラムではリーダーシップの考え方をいくつか取り上げます。

組織におけるリーダーシップの定義

リーダーシップとは一般的に「集団の目的(目標)達成において、その活動に影響を与える力」であると定義されます。
ここにはキーワードが3つあります。

1つ目は“目的”です。井戸端会議のような特に目的もない集まりの中では、リーダーシップ云々は問題になりません。リーダーシップは共通の目的を持つ集団の中で初めて議論されるものです。

2つ目は“達成”です。リーダーシップは集団の目的達成に向けて発揮されるものです。これを邪魔したり、これとは関係のないことに力を注いだりしても、それはリーダーシップとは言いません。

3つ目は“影響”です。リーダーシップは集団をチームに変える影響力だと言われます。この場合、チームとは集団の力がメンバー個々の力の総和を上回っている状態を指します。1+1を3にも5にもする力がリーダーシップであると言えます。

 

リーダーシップを考えるときの4要素

定義を踏まえた上で、いかにして良いリーダーシップを発揮するかを考えるときに把握すべき項目が4点あります。
(集団を引っ張るリーダーとリーダーに付いていくフォロワーがいることを前提とします)

4つの要素

 

  • リーダー自身の特性
    フォロワーへのアプローチ方法は様々です。例えば、“自分の思う通りに動かしたい” “フォロワーの言動を尊重し支援に徹する” “フォロワーと同じ立場に立って共に行動する” などです。リーダー自身がどのようなタイプを選択すべきか考慮する必要があります。
  • フォロワーの性質
    フォロワーが集まったときの組織の性質を見極めることは大切です。例えば、“発言も行動も積極的である” “批判はするけれど行動はしない” “言われたことはきちんとこなす” などです。集団の特徴によって取るべきリーダーシップは変わってきます。
  • 組織がおかれている環境
    組織がおかれている環境も大切な要素です。例えば、“編成されたばかりの新しい組織である” “組織として成熟している” “経済環境や法的規制の自由度が高い” “成長業界に属している” などです。このような内部環境・外部環境の影響も考慮していかねばなりません。
  • 組織の目的(目標)
    組織の目的とその重要度・緊急度も把握する必要があります。例えば、“過去最高の業績を目指している” “損失を最小限に抑えることが最優先” “今までとまったく違う分野の成果を上げる” などです。組織が目指すべき到達点のレベルによっても取るべきリーダーシップが変わります。

 

これら考慮すべき要素から言えることは、リーダーシップに固定した理想像(=リーダーシップの正解)はないということです。4つの要素の実態は千差万別だからです。
リーダーシップに万人共通の答えはありません。自分にとっての最高のリーダーシップを追求するという着眼点が重要です。

 

マネジメントとリーダーシップの対立思考

リーダーシップに万人共通の答えはないといっても、これまでの研究や経験談から参考すべき内容は沢山あります。本コラムでは2つ紹介します。
1つ目はマネジメントとリーダーシップを対立させるという考え方です。
これは“組織にはマネジメントとは別にリーダーシップという機能がある”と強調することで組織活動の効果を高めようとする考え方です。

以下のような対立軸があります。

  • 定められたルールの中で上手に業績を上げることがマネジメントの役目であり、
    組織そのものやルール自体を変えていこう、そうしないと組織の効果が高まらないという考え方がリーダーシップである。
  • マネジメントとは業務を管理する能力、つまり発生した問題を解決しながら組織の一貫性を保たせる能力であり、リーダーシップとは組織そのものの方向性を決める力である。
  • マネジメントは品質向上・コスト削減・業績アップなどの短期的な計画、現実的な事象に焦点をあてる。また現在のやり方を少しずつ改善し、リスクを下げることを重視する。(防衛的)
    一方、リーダーシップは新しい方向を決めるためにどのような秩序を定めるか、どのように組織を変革するかなど、未来に焦点をあてて、新たなビジョンを長期的に実行するものである。(攻撃的)

このようにマネジメントとリーダーシップを分けて解釈することで、組織の革新を促します。
これらリーダーシップの特徴にはリスクが大きいという共通点があります。“不確実な未来に向けて新しいことを実現する”といったリスクが大きい方向へフォロワーを引っ張る力がリーダーには求められます。

マネジメントとリーダーシップの役割や求められる能力の違いを理解することは、リーダー自身の思考を整理し組織の活動効果を高めるのに有効です。

 

組織・リーダー・フォロワーのベクトルを合わせる

2つ目は、ベクトルを合わせるという考え方です。
これはリーダーシップの定義で述べました「集団をチームに変える影響力」の基本的なアプローチです。
ベクトルを合わせるとは、集団・組織の目的が明確であるとき、リーダーとフォロワーがその目的達成と同じ方向に向かせることを指します。
いくら個々の能力が高くてもベクトルが揃っていなければ組織の力は弱くなります。

ベクトルを合わせた顕著な例がラグビーの日本代表チームです。2019年のラグビーW杯では“ONE TEAM”をスローガン掲げ、日本史上初めて予選グループを突破しベスト8進出を果たしました。この感動的な出来事の背景には、選手の約半数が外国人という多国籍チームの中、ベスト8入りという目標達成に向けベクトルを合わせチーム力を格段に高めたことが大きく影響しているはずです。日本代表を指揮したジョセフ氏のリーダーシップによって、1+1を5にも10にもした事例と言えます。

このようにバラバラな方向に向いている個の力を組織の目指すべき方向に合わせ、チームの力を高めることがリーダーシップの大切な考え方となります。

2020.8.29